ストーカー被害の女性の母と祖母を殺害した筒井郷太被告、上告棄却で死刑確定(長崎県西海市)

DVDに録画された被告の供述は具体的

被告は捜査段階では犯行を認めていたが、公判で無罪を主張

ストーカー被害の女性の母と祖母を殺害した筒井郷太被告、上告棄却で死刑確定(長崎県西海市)

ストーカー被害の女性の母と祖母を殺害した筒井郷太被告、上告棄却で死刑確定(長崎県西海市)

 長崎県西海市で2011年、ストーカー被害を訴えていた女性の母と祖母が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた筒井郷太被告(31)を死刑とした一、二審判決が確定する。

 最高裁第一小法廷(池上政幸裁判長)は21日の判決で、被告の上告を棄却した。

 判決によると、筒井被告は千葉県習志野市で同居していた女性が長崎県西海市の実家に連れ戻されたと思い込み、同年12月に女性の実家に侵入。

 母(当時56)や祖母(当時77)を出刃包丁で複数回刺して殺害した。

 被告は捜査段階では犯行を認めていたが、公判で無罪を主張。

 今年6月にあった上告審の弁論で、弁護側は「警察が被告を犯人に仕立て上げるため、自白を強要するなどの不当な取り調べをした」として、改めて無罪を訴えた。

 検察側は、「DVDに録画された被告の供述は具体的で、任意性を疑う余地はない」と反論。

 被告を死刑とした14年の二審・福岡高裁判決の判断は正当だとして、上告を棄却するよう求めていた。

(朝日新聞デジタル 2016年7月21日)

筒井郷太被告の生い立ちや裁判での様子

「幼少期から他の児童にかみついたり、家族に暴力を振るっていた」「依存性が強く、他罰的な性格だ」筒井被告の精神鑑定を担当した精神科医が語りました。

「善悪の判別能力や行動制御能力に影響を及ぼすとは考えられない非社会性パーソナリティー障害」と証言しました。

 また、自己を劇化する「演技性パーソナリティー障害」の傾向も見られるとしたうえで「被告の供述は虚言と言わざるを得ない」と述べました。
(第10回公判 2013年5月28日)より出典

 筒井からストーカー被害を訴えていた女性が「家族を殺すと言われていたので、死ぬことも逃げることもできなかった」と涙声で証言しました。

 また、鉄アレイで 殴られたり、手錠を掛けられ正座をさせられ蹴られるなどの激しい暴行や、「大型商業施設の雑貨売り場で男性客の接客をする時は、携帯電話を通話状態のまま にさせられていた」と束縛の状況を明らかにしました。

 筒井によるストーカー被害を訴えていた女性の姉2人が女性救出の様子などを証言。「部屋は物が散乱し、壁に血が飛んでいた。ひどい暴力があったと確信した」「私も被告にいつか殺されると覚悟し遺書を持ち歩いた」と語りました。
(第4回公判 2013年5月17日、第5回公判 2013年5月20日)より出典

 筒井被告は最終意見陳述で「僕は殺人などをしていません。裁判員や裁判官の方は先入観や思い込みを持たないでほしい」と無実を訴えました。
(第11回公判 2013年6月3日)より出典

 死刑判決が言い渡された瞬間、筒井被告は血の気が引いたような顔色をしていが、弁護士の方を向いて、笑みを浮かべながら法廷をあとにし、即日控訴しました。
(第12回公判 2013年6月14日)より出典

事件で家族を亡くした長崎県の山下さんの手記

 自分や家族の身に危険を感じたとき、どうやって、助けを求めればよいのでしょうか。

 事件で家族を亡くした長崎県の山下さんの手記がきょう、NHKに届きました。

 手記には「私は、誰も助けてくれないと絶望的な気持ちになりました」と書かれています。

 事件が起きたのは、先月16日。

 被害に遭ったのは山下さんの家族です。

 千葉県に住む20代の三女が同居していた筒井郷太容疑者に繰り返し、暴力をふるわれました。

 父親の山下さんは警察に相談し筒井容疑者が三女に近づかないようにしようとしました。

 しかし、ストーカー行為は止まりませんでした。

 家族は、3つの県の警察署にひとつき半にわたって繰り返し助けを求めてきましたが必死の訴えにもかかわらず長崎の実家が襲われ母親と祖母が殺されました。

 ストーカー行為がエスカレートして相手やその家族を殺害する事件はこれまで、たびたび繰り返されてきました。

 対策が強化され今回も、警察が対応に当たっていましたが、それでも事件は起きてしまいました。

 防ぐことはできなかったのでしょうか。

 山下さんの三女が暮らしていた、千葉県習志野市。

 部屋に、一人の男が同居するようになったのは去年夏ごろでした。

 筒井郷太容疑者、27歳です。

 2人が知り合ったきっかけは三女が仕事のため利用していたインターネットのサイトだったといいます。

 警察によると、筒井容疑者は同居した直後から繰り返し暴力をふるっていたといいます。

 殴ったり、どなったりしながら事実上、三女を支配する状態だったと見られています。

「男性の方がものすごいヒステリックに大声出して 壁とか叩いている音は聞こえてて “言ったことやれよ”とか そんな感じ 多分ここの人たちはみんな聞こえているんじゃないですか」

 異変は、長崎県西海市に住む家族に伝わりました。

 父親の山下さんは三女の勤務先などから連絡を受け10月29日地元の駐在所へ駆け込みました。

 「千葉にいる娘が暴力を受けているようですトラブルになるかもしれないので 千葉県警に連絡してください」

 山下さんの訴えは駐在所から、地元の西海署長崎県警察本部そして、千葉県警察本部習志野署へと伝えられました。
 
 翌日、警察が動きました。

 職場の上司や姉と共に、習志野署の警察官が部屋に立ち入り三女を保護したのです。

 三女は、筒井容疑者に殴られ、顔や腕に2週間のけがをしていました。

 警察官は、筒井容疑者を習志野署に連れていきました。

 暴力は、ふるわないよう警告し二度と三女に連絡しないという誓約書を取りました。

 三女は、長崎の実家へ避難し問題は解決したかに見えました。

 しかし、その直後。二度と連絡しないと誓ったはずの筒井容疑者から、三女のもとに電話が、ひっきりなしにかかってきたのです。

 11月1日、習志野署は筒井容疑者に電話し連絡しないよう再び警告しました。

 しかし、警察の警告は効果がなく筒井容疑者の行動はエスカレートしていきました。

「居場所を教えなければ殺す」。

 三女の友人や、職場の同僚にまで脅迫メールを送りつけるようになりました。

 不安を募らせた山下さんは、筒井容疑者の実家がある三重県桑名市の警察署にも電話しました。

 しかし筒井容疑者が、どこにいるのかはっきりしたことは分かりませんでした。

 警察に逮捕してもらうしかない。

 12月6日、山下さんと三女は傷害事件として被害届を出すため長崎から習志野署へ足を運びます。

 いつ来てもらってもいいと言われていました。

 ところが、山下さんは思いもよらない対応を受けました。

 被害届を出すのは1週間待ってほしいと言われたのです。

 これまで、この問題を担当してきたのは生活安全課。

 家庭内の暴力やストーカー行為などを扱うセクションでした。

 しかし、この日、担当が生活安全課から刑事事件の捜査が専門の刑事課に変わったのです。

 刑事課は、いきさつについて一から話を聴くことになりました。

 そして、すぐには被害届を受けられないと伝えたのです。

「1週間待ってほしいと言われました。
なぜ被害届を受理してもらうまで時間や費用がかかるのか不合理な気持ちです」。

 警察は、どうして待ってほしいと言ったのか。

 取材に対して、警察は…。

「この時刑事課では複数の事件を抱えていた 筒井容疑者を起訴まで持ち込める捜査をするため 他の案件を片付けてしっかりした体制を作りたかった」と説明しています。

 被害届をすぐには受けてもらえなかった家族。

 事件が起きる10日前のことでした。

長崎ストーカー 問われる警察の対応

 この1週間という判断が、結果としては最悪の事態につながる大きな要因になったといえると思います。

 生活安全課から引き継いだ刑事課は、今回の事案を、必ずしも軽く見ていたわけではなく、逮捕して起訴に持ち込むために、一定の時間をかけて、きちんと捜査をしようとしたとしています。

 しかし、結果的にはより迅速な対応が求められたわけで、生活安全課が緊急性の高さをどこまで認識し、そして、それを刑事課に伝えていたのか、大きな疑問です。

 そこ(生活安全課が刑事課に引き継いだ判断自体)についても検証が必要だと思います。

 もともと山下さんの相談を担当していたのは、生活安全課ですから、これまでの経緯を詳細に把握していました。

 さらに筒井容疑者は以前、別の女性へのストーカー行為で逮捕されていましたが、このことも把握していました。

 生活安全課が引き続き対応していれば、もっと早い動きが取れたかもしれません。

 この(10月30日の立ち入りの時点と、その直後に2回警告している)時点で警察は、三女から傷害の具体的な内容までは聞けておらず、逮捕などに踏み切ることはできなかったとしています。

 また、一般に警察が警告を出せば、ストーカー行為は収まる場合も多いとされているんです。

 このため警察としては、警告を繰り返せば、筒井容疑者の行動に歯止めがかけられると判断したと見られます。

 筒井容疑者は警告のあと、三女の職場の同僚にまで居場所を教えなければ殺すという内容の脅迫メールを送りつけるなど、過激な行為に出るようになります。

 ストーカーが行為をエスカレートさせた末に、交際相手の家族にまで危害を加えるケースというのは、決してめずらしくありません。

 例えばおととしにも、宮城県石巻市で、当時18歳の少年が、交際相手の家族にまで危害を加えるケース、元交際相手の女性の姉などを殺害した事件がありました。

 警察は今回の事案の深刻さと、家族などにも危害が及ぶ危険性に思いが至らなかったのは、やはり問題があったと言わざるをえないと思います。

なぜ防げなかった 長崎ストーカー殺人

 被害届が受理されるのを待つ間千葉の三女の部屋を片づけていた、山下さん。

 12月9日、マンションの前を筒井容疑者がうろついていたことが分かりました。

 警察に捕まえてほしいと訴えたといいます。

 明らかなストーカー行為。

 ストーカー規制法で取り締まる対象となるものでした。

 この法律は、13年前埼玉県桶川市の女子大生がストーカー被害の末殺害された事件をきっかけに作られました。

 被害の訴えに耳を貸さない警察の対応が、強く批判を浴びた反省から積極的にストーカー行為を取り締まるようにしたのです。

 取締りが難しかった付きまといや待ち伏せなどの行為に対しても悪質な場合は、警察が逮捕できるようになりました。

 三女に執ように付きまとう筒井容疑者。

 習志野署の警察官が現場で職務質問をし、警察署に呼び出しました。

 しかし、習志野署はまたしても警告にとどめ三重県の実家に帰るよう指示しました。

 ストーカー行為が、エスカレートしているにもかかわらずストーカー規制法を適用して逮捕することも傷害事件の捜査を急ぐこともしませんでした。

 ストーカー規制法の策定に携わった警察庁OBの後藤啓二さん。

 警察は危機感を持って踏み込んだ対応をすべきだったと指摘しています。

 「警察が2回も警告しているのに まだ“はいかい”しているとか
かなり危険な案件だということは経験上 警察もわかっていたと思います
とにかく早く対応する 早く加害者の身柄を確保して被害者の安全を図るという方針をとるべきだったと思うんですよね」

 結局、習志野署が被害届を受理したのは12月14日になってから。
 事件が起きる2日前のことでした。

 その夜、三重県桑名市の筒井容疑者の実家で深刻な事態が起きました。

 父親にストーカー行為をとがめられた筒井容疑者が父親を殴って家を飛び出したのです。

 「“うぉー”っていう叫び声が聞こえたあと 救急車が来られたので…」

 桑名署の警察官も駆けつけましたが、筒井容疑者の行方は分かりませんでした。

  桑名署は、筒井容疑者の両親から事情を聴いたうえ習志野署に連絡しました。

 習志野署は三女の無事を確認するため、山下さんに連絡したとしています。

 2人が千葉県周辺の筒井容疑者も知らない場所にいることを確かめたということです。

 このとき、習志野署は筒井容疑者がいなくなったことを三女の実家がある長崎県警や西海署に伝えることまではしませんでした。

 実は、習志野署は15日西海署に電話をしていました。

 しかし、三女の被害届を受理したことを報告しただけでした。

 長崎県警は、筒井容疑者が行方不明になったことを知らず、特別な対応を取ることはありませんでした。

 この頃、筒井容疑者はすでに九州に向かっていたと見られています。

 次の日、12月16日筒井容疑者は刃物を持って実家に侵入。

 帰宅した三女の母親と祖母を殺害しました。

 筒井容疑者は調べに対して三女が長崎にいると思い会いに来たと供述しているということです。

 たび重なる家族の訴えがありながら警察は、なぜ最悪の事態を防ぐことができなかったのか。

 「ご家族からのご相談への具体的な対応が適切であったか。
ご家族を含めた被害関係者の皆様に対する保護が万全であったかといった点について検証をしております。
さらに、届け出を受けた事件の捜査状況や関係警察への連絡が適切に行われたかどうかなどについても検証を進めているところです。
また、ご遺族にも警察の対応についてご説明申し上げたいと考えております。」

 家族を失った山下さんの思いです。

「警察からは筒井容疑者とは目を合わせるな手を出すなと言われましたが結局それは、黙って殺されろと言われたのと同じです。
この国で、誰が筒井容疑者のような危険人物から命を守ってくれるのか今も分からずにいます。」

(NHKクローズアップ現代 2012年1月24日

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